平成25年(2013年)予備試験憲法答案

武藤遼のプロフィール

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2013年憲法問題

答案

第1 甲案について

1 Dの主張

政党には公認候補を自由に決定する自由があるところ、甲案はかかる自由を侵害している。そのため、甲案の合憲性を検討する。

⑴  政党も私的団体であり、その活動は結社の自由(憲法21条1項)の一内容として保障されるところ、公認候補の決定も政党の活動の一内容であるから、上記自由は同項により保障される。

⑵ そして、甲案は、一定の場合に政党が世襲候補者を公認候補とすることを禁止するものであり、上記自由を制約している。

⑶ 公認候補が誰であるかは政党にとって重要な事項であり、公認候補の決定は政党の重要な活動の一つであるため、上記自由は重要である。また、甲案は世襲候補者を公認候補とすることを事実上困難にするもので、規制態様は強度といえる。そこで、上記制約は、必要最小限度の制約であるといえる場合にのみ正当化される。

これを本件についてみる。甲案の目的は選挙の公正の維持にあるところ、かかる目的は全候補者の選挙資金を一定額に制限する等の他の手段によっても達成されるから、上記制約が必要最小限度の制約であるとはいえない。

⑷ よって、甲案は21条1項に反し、違憲である。

2 想定される反論

政党は議会制民主主義の構成要素として公的性格を有することから、その活動に対する相当程度の制約が正当化される。世襲候補者は後援会組織等のメリットを有し一般の新人候補者に対して優位にあるから、公認候補とできないとすることによってのみ選挙の公正を維持できるといえる。そのため、上記制約は相当程度といえ、甲案は合憲である。

3 私見

⑴  Dの主張の通り、上記自由は21条1項により保障されており、甲案により制約されている。

⑵ そして、政党の理念に沿った者を公認候補とすることは政党が一つの団体として活動する上で重要である。もっとも、政党は議会制民主主義において民意の媒介となるという公的性格を有する団体でもあり、上記自由は一定の制約を受けることを予定している。他方で、都道府県を変更し立候補することは候補者に大きな負担を伴わせる以上、甲案は世襲候補者を公認候補とすることを事実上困難にするものであり、規制態様は強度である。そこで、上記制約は①目的が重要であり、②手段が目的との関係で効果的で過度でない場合に合憲であるといえる。

⑶ これを本件についてみる。甲案の目的は選挙の公正の維持にあるが、かかる目的は国民の意思を国政に適切に反映させるために重要であるといえる(①充足)。そして、議員の活動は選挙区における有権者の信頼を基盤としていることからすれば、世襲候補者が同じ選挙区から立候補することにより後援会、選挙資金、知名度等のメリットを享受できるとする主張には一定の合理性が認められる。また、政党は世襲候補者を公認候補とすることが全くできなくなるわけではないから、候補者の決定に対して過度の制約を課しているともいいがたい(②充足)。

⑷ よって、甲案は合憲である。

第2 乙案について

1 Dの主張

世襲候補者には立候補する選挙区を決定する自由があるところ、乙案はかかる自由を侵害している。そのため、乙案の合憲性を検討する。

⑴  立候補の自由(被選挙権)は選挙権(15条1項)と表裏一体の関係にあり同項で保障されるので、上記自由も同項で保障される。

⑵ そして、乙案は世襲候補者が特定の小選挙区から立候補することを禁じるものであり、上記自由を制約している。

⑶ 立候補の自由は民主主義を維持する上で不可欠な権利であるところ、乙案は世襲候補者の立候補を事実上困難にするもので、その規制態様は強度である。そのため、上記制約は必要最小限度の制約であるといえる場合にのみ正当化される。

これを本件についてみる。乙案の目的は選挙の公正の維持にあるところ、かかる目的は全候補者の選挙資金を一定額に制限する等の他の手段によっても達成されるのであって、上記制約は必要最小限度の制約であるとはいえない。

⑷ よって、甲案は21条1項に反し、違憲である。

2 想定される反論 

選挙制度の決定については、国会に広範な裁量(47条)があるから、上記自由に対して相当程度の制約が許される。そして、世襲候補者が受けるメリットの大きさを踏まえると、乙案による上記制約も相当程度の制約といえ、乙案は合憲である。

3 私見

⑴ Dの主張の通り、上記自由は15条1項により保障されており、乙案により制約されている。

⑵ そして、上記自由は、民主主義の根幹に関わるものであって重要な権利であるが、選挙制度については立法府の広範な裁量を尊重する必要性もある。一方、乙案は特定の小選挙区における立候補を不可能にするものであり、その規制態様は強度である。そこで、上記制約は①目的が重要であり、②手段が目的との関係で効果的で過度でない場合に合憲であるといえる。

⑶ これを本件についてみる。乙案の目的は甲案と同様であり重要である(①充足)。しかし、後援会組織等のメリットを有するのは世襲候補者のみとはいえず、乙案は世襲候補者を不合理に差別するものとして平等原則(14条1項)に反するから、乙案は上記目的を達成する手段として過度である(②不充足)。

⑷ よって、乙案は15条1項に反し、違憲である。

以上 

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