平成24年(2012年)予備試験憲法答案

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初めまして、武藤遼といいます。 まずは自己紹介をさせていただきます。 僕は今、司法試験の受験指導をしています。大学4年生の時からこの仕事をやっています。 武藤流というブランドで教えてます。僕は今25歳なので、3年近く受験指導をしていることに[…]

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2012年憲法問題

答案

第1 設問1

1 国民審査法(以下「法」という。)15条1項は、最高裁判所裁判官として適格と判断した裁判官について〇の記載をすることを認めない点、及び白紙票を罷免を可としない表とする点で、憲法79条2項に反する。

⑴ この点について、国民審査制の趣旨は、裁判官の任命において国民の意思を反映し、民主的なコントロールを及ぼす点にある。そして、79条2項は、「任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付」す旨定める。また、任命後間もない時期の審査では、最高裁判所裁判官としての実績に関する資料も不足していることから、国民審査は、内閣の任命行為に対する事後審査としての法的性質を持つと考えるべきである。このことからすれば、国民が裁判官としての適格性について積極的に意見を表示することを認めるべきである。

さらに、現在においては、国民は、インターネットを通して裁判官に関する情報を知ることができ、1952年の立法当時に比べると国民の判断より合理的なものとなっていることが期待できる。そうだとすれば、国民審査においても国民の判断は尊重されるべきであり、その判断を表明する機会が確保されるべきである。そのため、1952年の最高裁判決の判断は、時代の変化に対応していないものといえ、新たな判決がなされるべきである。

そこで、憲法は、国民審査において、罷免を可とする場合に×を記載するのみならず、適格な場合は〇、棄権は無記入という記載がなされるべきことを求めていると解する。

⑵ これを本件についてみる。法15条1項は罷免を可とする場合のみ×の記号を記載し、その他の場合には何等の記載をしてはならないと定めており、上記のような取扱いをしていない。

⑶ したがって、同項は79条2項に反する。

2 また、法53条及び同条に基づき規定された最高裁判所裁判官国民審査法施行令(以下、「令」という。)26条に基づく審査広報の記載は不十分であり、両条項は憲法79条2項に反する。

⑴ この点について、上記の国民審査の趣旨からすれば、憲法79条2項は、単に国民審査の実施を求めているのみでなく、国民が裁判官の任命を容易に判断できる程度の記載がある資料の提供を要求しているといえる。

⑵ これを本件についてみる。国民審査は国民的関心を集める重要な行事であるところ、対象となる裁判官の経歴や裁判での見解は、適格性の判断において重要といえる。しかし、両条項はこれらの情報の記載を求めていない。

⑶ したがって、法53条及び令26条は79条2項に反する。

第2 設問2

1 法15条1項について

⑴ 想定される被告側の反論

国民審査制の法的性質は、79条3項の文言から、リコール性であると解される。そうだとすれば、審査人たる国民は、積極的に罷免を可としているのかそうでないかがわかればよく、審査における記載事項は×かそれ以外で分けるのがむしろ合理的である。そのため、判例変更の必要はない。よって、法15条は79条2項に反しない。

⑵ 私見

ア そもそも、国民審査は、司法権の行使における最高裁判所の重要性にかんがみ、主権者である国民に対し、最高裁判所の裁判官についてこれを罷免する機会を与えることによって、最高裁判所の裁判官を国民による民主的統制の下に置こうとする制度である。そして、79条3項は、「投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。」と定めており、この文言からして憲法は国民審査をリコール制として定めたものといえる。また、79条4項が、「審査に関する事項は、法律でこれを定める。」として、国会に一定の裁量を認めていることからすると、罷免の可否を判断できる現行の制度が、直ちに79条2項に反するとまではいえない。

また、多数決原理に服さず少数者の人権を守るという裁判所の役割は1952年当時から変わるものではなく、そのような裁判所の役割を覆してまで判例変更を要求するような時代の要請があるともいえない。

イ よって法15条1項は79条2項に反しない。

2 法53条、令26条について

⑴ 想定される被告側の反論

法53条及び令26条によって、憲法79条2項の要求は満たされている。

⑵ 私見

ア この点について、国民が裁判手続を十分に理解していることは必ずしも期待できるものではなく、裁判官に対して民主的統制を及ぼすためには、国民に対し適切な情報を提供する必要がある。そのため、79条2項は審査公報の公布を要求するとともに、その程度としては国民による審査が適正に行われる程度の記載を求められているといえる。もっとも、審査公報が、適格性判断のための唯一の資料でないことからすれば、審査対象となる裁判官に関して詳細な記載までは要求してないと考えられる。

イ これを本件についてみる。法53条及び令26条によって要求される「裁判官の氏名、……関与した主要な裁判」の記載があれば、裁判所のホームページ等を活用することで対象となる裁判官の裁判における見解を知ることができ、現状の制度でも適格性判断のための十分な資料を得ることができるといえ、審査広報には国民審査が適切に行われる程度の記載がなされているといえる。

ウ よって、法53条、令26条は79条2項に反しない。

以上

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